『嫌われる勇気』
きらわれる ゆうき
岸見一郎・古賀史健·現代
アドラー心理学を対話形式で解説した日本最大のベストセラー
この著作について
哲学者・岸見一郎と作家・古賀史健が2013年に共著で公刊した、アドラー心理学を青年と哲学者の対話形式で描いた現代の名著。
【内容】
悩みを抱えた青年が哲学者の部屋を訪れ、5夜にわたり議論する構成で進む。「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」、過去の原因ではなく今の目的で人を理解する「目的論」、他人と自分の人生を切り分ける「課題の分離」、承認欲求を手放し共同体感覚へと向かう道、そして「今ここに全力を注ぐ」実践的な人生態度が、日常の具体例とともに噛み砕かれる。
【影響と意義】
日本で200万部を超えるベストセラーとなり、長く忘れられていたアルフレッド・アドラーの個人心理学を一般読者に広めた。フロイト・ユングの影に隠れがちだったアドラーの「勇気づけ」の思想が、ビジネス書・自己啓発にとどまらず、教育・子育て・組織論など幅広い分野に影響を与えるきっかけとなった。
【なぜ今読むか】
過去や他人のせいにする思考を断ち切り、「今ここから変われる」という実感を手にできる。対人関係で疲れた読者が人生の主導権を取り戻すための実践的指針として、一生のうちに一度は通っておきたい一冊。
さらに深く
【内容のあらまし】
物語は、かつて千年の都とうたわれた古都のはずれから始まる。世界はどこまでもシンプルで、人は今日からでも幸せになれる。そう説く哲学者のもとを、納得のいかない青年が訪ねる。哲人は、世界が複雑なのではなく、あなたが世界を複雑にしているのだと応じ、ひとりの例外もなく、いまこの瞬間から人は変われると言い切る。
第1夜、書斎で哲人は自らを哲学に生きる人間と名乗り、アドラーの思想はギリシア哲学と地続きの哲学だと語る。青年は何年も自室にこもる友人の例を持ち出す。哲人は、彼は不安だから外に出られないのではなく、外に出たくないから不安という感情をつくり出しているのだと返す。過去の原因ではなくいまの目的で考えるこの立場が目的論で、アドラー心理学はトラウマをはっきり否定する。青年が変われずにいるのは、変わらないという決心を自分に下しているからだと哲人は指摘する。
第2夜、哲人は人間の悩みはすべて対人関係の悩みだと言い切り、身長155センチの自分を例に、劣等感は他者との比較から生まれる主観的な解釈であり、主観だからこそ自分の手で選び直せると説く。相手の言動に本気で腹が立ったときは、相手が権力争いを挑んできていると考えよという。わたしは正しいと確信した瞬間に、人はすでにその争いに足を踏み入れている。だから誤りを認め、謝ることは負けではない。
第3夜は承認欲求の否定から入る。職場でごみを拾っても誰からも感謝されなければ憤慨したり、二度とやるまいと決めたりするのは、ほめてもらうことが先に目的としてあるからだ。他者の期待など満たす必要はないという哲人に青年が身勝手だと反発すると、自分のために生きないなら誰が自分のために生きてくれるのか、というユダヤ教の教えが引かれる。続いて、勉強は誰の課題か。それは子どもの課題であり、親が勉強しなさいと命じるのは他者の課題に土足で踏み込む行為だという。議論は、自由とは他者から嫌われることだという結論に至る。
第4夜、哲人は他者を仲間とみなし、そこに自分の居場所があると感じることを共同体感覚と呼び、その共同体は過去から未来、宇宙全体までも含むと語る。他者の評価ばかり気にする人も、自分にしか関心がない点で自己中心的だとして、自己への執着を他者への関心に切り替えよと説く。抽象論に逃げていると詰め寄る青年には、学校に居場所がないなら外に別の居場所を見つければよく、出口が見えなくなったら、より大きな共同体の声を聴けと答える。第5夜は「いま、ここ」を真剣に生きることを主題とし、過剰な自意識が自分にブレーキをかけるという話や、自己肯定ではなく自己受容を説く話が続く。
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