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正義と差異の政治

せいぎとさいのせいじ

アイリス・マリオン・ヤング·現代

抑圧の五形態を解明したフェミニスト政治哲学の代表作

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政治フェミニズム

この著作について

シカゴ大学の政治理論家アイリス・マリオン・ヤング(1949〜2006)が1990年に公刊した、フェミニスト政治哲学・批判理論の代表作(原題『Justice and the Politics of Difference』)。

【内容】

ヤングは、ロールズらの「分配」中心の正義論を批判し、正義の射程は分配可能な財だけでなく、社会的構造としての「抑圧(oppression)」と「支配(domination)」にまで及ぶべきだと論じる。彼女は抑圧を五つの顔として分析する:搾取(exploitation)、周縁化(marginalization)、無力化(powerlessness)、文化帝国主義(cultural imperialism)、暴力(violence)。これらは法的差別の撤廃だけでは解消しない構造的不正義であり、集団としてのアイデンティティを政治的に承認する「差異の政治」が必要だと主張する。同質的「市民」を前提とするリベラル普遍主義への根本批判となる。

【影響と意義】

フェミニズム第三波、批判的人種理論、クィア理論、障害学などに広く影響した。「差異の政治」概念は現代のアイデンティティ政治の理論的基礎の一つとなっている。日本では岡野八代らによる紹介を経て、政治理論・社会学に影響を及ぼしている。

【なぜ今読むか】

アイデンティティ政治の意義と限界を考えるとき、その理論的源流を辿るための必読書。差別を「個人間の問題」ではなく「構造の問題」として捉え直す道具を与える。

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