石
『石上私淑言』
いそのかみのささめごと
本居宣長《もとおりのりなが》·近代
「物のあはれ」論の出発点となる宣長の歌論
哲学文化・宗教
この著作について
本居宣長が34歳の宝暦13年(1763)頃にまとめた歌論書である。生前未公刊で、文化13年(1816)に刊行された。先行する『排蘆小船』の議論を発展させ、和歌の本質を「物のあはれを知る心」に求める論を体系化した。
【内容】
宣長は和歌の本質を、外界の事物や出来事に触れて心が動き、その動きを率直に言葉にする働きに見いだす。この心の働きを「物のあはれを知る」と呼び、知性や道徳の判断に先立つ人間の根源的感受性として位置づける。儒教や仏教の解釈枠組みから歌を解放し、文芸を独自の価値領域として擁護する論調は、本書において一段と明確になる。
【影響と意義】
後の『紫文要領』『源氏物語玉の小櫛』へと受け継がれる「もののあはれ」論の出発点であり、宣長国学の文芸論の中核を形成する。江戸後期から明治期の日本文学観、ひいては近代日本の感性論にも長く影響を与え続けた。
【なぜ今読むか】
言語化されにくい感受性を、文学はいかに引き受けるかという問いは現代でもなお切実である。AIによる生成と人間の心の動きを区別する手がかりを、本書の議論に求めることもできる。
著者
関連する哲学者と話してみる
