源
『源氏物語玉の小櫛』
げんじものがたりたまのおぐし
本居宣長《もとおりのりなが》·近代
源氏物語に「もののあはれ」を読み取った本居宣長の国学的註釈
文学日本
この著作について
江戸中期の国学者・本居宣長が1799年に公刊した『源氏物語』の註釈書。全9巻。平安文学の最高峰を、儒教・仏教的教訓文学としてではなく、純粋な文学として読み直した、日本文学批評史の金字塔である。
【内容】
総論「もののあはれの論」において、『源氏物語』の核心は「もののあはれを知ること」であり、善悪の教訓ではなく人間の感情の機微をそのまま描いたところにあると論じる。儒教的・仏教的な道徳解釈を徹底的に退け、文学を「感情の純粋な表現」として評価する視座を確立した。以下の各巻では、主要場面・詞の意味・ゆかりの風俗を、師匠賀茂真淵《かものまぶち》の古義学の方法で精密に注釈する。
【影響と意義】
日本文学批評の近代的視座を開き、以後の折口信夫・小林秀雄・丸谷才一・大野晋ら国語国文学者・批評家に持続的に参照される。近代日本の「文学の自律性」論、美学における「幽玄・あはれ」論の基礎文献となった。小林秀雄『本居宣長』(1977)はこの書の読解を核として書かれている。
【なぜ今読むか】
文学を文学として読む態度の古典的モデルとして、現代読書論にも直結する。「物語を教訓で読むな」という一見単純な主張が、いかに近世日本の思想史を動かしたかを味わえる。
著者
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