徳
『徳あるいは功徳に関する探求』
とくあるいはくどくにかんするたんきゅう
アンソニー・アシュリー・クーパー(シャフツベリ伯)·近代
徳と幸福の調和を説いた道徳感覚論の先駆
哲学倫理学
この著作について
シャフツベリ伯による1699年の道徳哲学論である。原題は『An Inquiry concerning Virtue, or Merit』。後に1711年の主著『人間・風習・意見・時代の特性(Characteristics)』に収録された。
【内容】
シャフツベリは、徳ある行為が人間の自然本性と調和し、結果として行為者自身の幸福にもつながることを論証しようとする。利己心と利他心は対立するものではなく、適切に整序されれば相互に支え合うと説く。人間には善悪を直観的に感じ取る「道徳感覚(moral sense)」が備わっており、徳は外的規範ではなく内的調和として捉えられる。
【影響と意義】
本書はハチスンやヒュームへとつながる道徳感覚論の出発点となり、英国モラリストの伝統を形成した。さらにディドロが1745年に仏訳したことで、英国理神論と道徳哲学がフランス啓蒙の中に流れ込む契機となった。アダム・スミスの『道徳感情論』にもその余韻を残している。
【なぜ今読むか】
道徳を理性の命令としてだけでなく、感受性と全体的調和の観点から捉える視点は、感情を再評価する現代の倫理学にも示唆を与える。ディドロを介した思想の越境を考える上でも欠かせない一冊である。
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