フィロソフィーマップ

感情と法:現代アメリカ社会の政治的リベラリズム

かんじょうとほう

マーサ・ヌスバウム·現代

嫌悪と恥を法・政治の場で批判的に分析する

Amazonで見る
哲学倫理学政治哲学

この著作について

アメリカの哲学者マーサ・ヌスバウムが2004年に刊行したHiding from Humanity: Disgust, Shame, and the Lawの邦訳である。河野哲也《かわのてつや》の監訳により2010年に慶應義塾大学出版会から出版された。

【内容】怒り・嫌悪・恥といった感情を、単なる衝動ではなく価値判断を含む認知として再定位し、それらが法と政治的排除の場面で果たす役割を批判的に分析する。とりわけ嫌悪と恥が、性的マイノリティ・障害者・身体的逸脱者を社会から排除する論理として機能してきた歴史を検証し、リベラリズムが許容しうる感情の範囲を再定義する。デヴリンとハートの法と道徳論争を踏まえつつ、自由主義的法理論の側から感情を再検討する点に独自性がある。

【影響と意義】感情の哲学を政治哲学・法哲学の中核に据える方向性を明示し、後の怒りと赦し『政治的感情』へとつながる思想的射程を切り開いた。法学者・倫理学者・フェミニズム研究者の双方に影響を与え、性的少数者の権利論や差別禁止法の理論的基盤としても参照されている。

【なぜ今読むか】SNS時代の道徳的怒りや恥の応酬が公共空間を歪めるなか、感情の認知的構造を解きほぐす本書の議論は、過熱する論争の質を見直す道具となる。法と感情の関係を考える起点として欠かせない。

著者

Amazonで見る