地
『地獄の思想』
じごくのしそう
梅原猛《うめはらたけし》·現代
日本の浄土信仰を地獄観・死生観から文化史的に論じた梅原猛《うめはらたけし》の著作
宗教哲学
この著作について
日本思想史家にして国際日本文化研究センター初代所長の梅原猛《うめはらたけし》が、日本文化を「地獄」の想像力から読み解いた独創的論考。
【内容】
本書は『往生要集』の源信《げんしん》が描いた八大地獄、今昔物語集《こんじゃくものがたりしゅう》の地獄説話、地獄絵巻の視覚イメージなど、平安末期から中世にかけて噴出した地獄観を詳細に辿る。そのうえで、地獄の恐怖を背景に成立した法然《ほうねん》の専修念仏、親鸞《しんらん》の悪人正機、一遍《いっぺん》の踊り念仏といった鎌倉仏教の登場を、死への恐怖と罪の意識に対する文化的応答として位置づけ直す。後半では、近松、芭蕉、宮沢賢治ら後世の文学における「地獄のイメージ」と、日本的霊性の特質が論じられる。梅原独特の縦横な比較文化的筆致が貫かれている。
【影響と意義】
戦後日本の思想家のなかでも、梅原猛の仕事は日本文化を古代から近代まで貫く独自の文化史として描こうとした点に特徴がある。本書は『隠された十字架』『水底の歌』などと並ぶ主要作で、文学・宗教学・精神史の研究者に広く参照されている。
【なぜ今読むか】
死を遠ざけがちな現代社会に、地獄のイメージを通じて死の重みを描き直してきた日本文化の蓄積に触れることは、自分の死生観を静かに深める機会となる。