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水底の歌

みなそこのうた

梅原猛《うめはらたけし》·現代

柿本人麻呂水死刑死説を提起した梅原日本学の主著

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哲学文化・宗教

この著作について

哲学者・梅原猛《うめはらたけし》(うめはらたけし、1925〜2019)が1973年に新潮社から刊行した万葉論で、副題は「柿本人麿論」である。第27回毎日出版文化賞および大佛次郎賞を受賞し、戦後日本における人文系ベストセラーの一つとなった。

【内容】本書は万葉集を残した宮廷歌人・柿本人麻呂《かきのもとのひとまろ》の生涯と死をめぐり、従来の通説を覆す大胆な仮説を提示する。梅原は人麻呂の挽歌・羈旅歌・恋歌を綿密に読み解き、彼が藤原氏の政争に巻き込まれて石見国へ流され、そこで水死刑に処せられたと論じる。歌に詠まれた地名・自然描写・身体の状況などを実地調査と組み合わせ、文学・歴史・地理を統合する独自の方法で論証を進めていく。

【影響と意義】戦後日本の思想家のなかでも、梅原猛の仕事は日本文化を古代から近代まで貫く独自の文化史として描こうとした点に特徴がある。本書は隠された十字架などと並ぶ主要作で、文学・宗教学・精神史の研究者に広く参照されている。万葉学の専門家からは異論も出たが、人麻呂研究と古代史研究を一般読者の眼前へ引き出した功績は大きい。

【なぜ今読むか】直観と実証の緊張から生まれる思考の運動を体感できる一冊である。古典文学を「読み直す」という営みがどれだけスリリングかを示してくれる。

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