要
『要約福音書』
ようやくふくいんしょ
レフ・トルストイ·近代
奇跡を排しキリストの倫理だけを残した福音書再構成
哲学宗教キリスト教
この著作について
レフ・トルストイが1881年に執筆した独自の福音書要約。四つの福音書を一つに編み直し、奇跡・受胎告知・復活など超自然的とされる要素をすべて削ぎ落として、イエスの倫理的教えだけを骨格として残した、後期トルストイ宗教思想の中核的著作である。
【内容】
全12章。「父のもとに帰る」という主題のもと、神を「いのちの源」と捉え直し、肉体の死を超える「いのち」に向かって生きることがイエスの教えの中心だとされる。山上の垂訓の五つの戒め、すなわち怒らないこと、肉欲に支配されないこと、誓わないこと、悪に手向かわないこと、敵を愛することが、生活の具体的な指針として並べ直される。教義的な装飾を取り去ったあとに残るのは、ほとんど散文詩のように凝縮されたイエスの言葉である。ロシア国内では発禁となり、1890年代にジュネーヴで初めて公刊された。
【影響と意義】
第一次世界大戦に従軍した若きウィトゲンシュタインが本書を肌身離さず携帯し、戦地で繰り返し読んだことで知られ、彼を「福音書のウィトゲンシュタイン」と呼ぶ呼称まで生んだ。ガンディーやドロシー・デイ、無教会主義のキリスト者たちにも長く読み継がれている。
【なぜ今読むか】
聖書を一度も通読していない読者にも、薄く強い倫理書として近づきやすい。福音書を「教義」ではなく「生き方」として読み直す入口になる。
著者
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