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『フランツ・ファノン』
海老坂武《えびさかたけし》·現代
ファノンの生涯と思想を辿る日本語圏の標準評伝
哲学評伝ポストコロニアル
この著作について
サルトル研究者・海老坂武《えびさかたけし》が、精神科医にしてアルジェリア解放戦線の闘士となったフランツ・ファノンの生涯と思想を、現地取材を踏まえて描いた本格評伝。一九八一年講談社「人類の知的遺産」シリーズの一冊として初版が出され、二〇〇六年にみすず書房から改訂増補版として再刊された、日本語圏におけるファノン研究の標準的入門書である。
【内容】
本書は、フランス領マルティニーク島の中産階級に生まれたファノンの少年時代、第二次大戦下の自由フランス軍従軍体験、リヨンでの精神医学の研鑽、アルジェリアのブリダ精神病院での勤務、独立戦争への身の投じ方、そして三十六歳での白血病死までを年代順に辿る。並行して、ネグリチュード批判から発した『黒い皮膚・白い仮面』、植民地暴力と民族解放の弁証法を論じた『地に呪われたる者』、社会精神医学的論考や時局的政治論を、具体的な歴史状況のなかに置き直して読み解く。著者自身がパリ・マルティニーク・アルジェリアを訪ねた記録も挿入される。
【影響と意義】
本書は日本のポストコロニアル研究と仏語圏文学・思想の受容を支え、ファノン像を活動家神話から思想家像へと引き戻すうえで大きな役割を果たした。多くの研究者にとって、ファノンを真剣に読むための導きの糸であり続けている。
【なぜ今読むか】
人種・植民地・暴力をめぐる議論が世界各地で再燃するなか、ファノンの思想を一個の人間の闘いとして辿り直す本書は、抽象的な理論にとどまらない切実な手がかりを与えてくれる一冊である。
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