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エ

『エウテュプロン』

古代

善と神の関係をめぐる短い対話篇。善悪の基準の問題を考えるうえで今なお重要

哲学

この著作について

プラトン初期対話篇の短い一作で、のちの「エウテュプロンのジレンマ」として有名な問題提起を含んでいる。

【内容】

舞台はアテナイの裁判所の門前である。ソクラテスが不敬神の罪で召喚された当日、父を殺人罪で告訴しようとしていた若い占い師エウテュプロンと出会う。ソクラテスは彼に「敬虔(ホシオン)」とは何かを訊ねる。エウテュプロンは最初、父を告訴しようとしているいまの自分の行いこそが敬虔だと答える。のちに「神々に愛されるものが敬虔である」と言い直し、さらに「すべての神々が愛するもの」に絞るが、ソクラテスはそこで核心に切り込む。「神々は敬虔なものを、敬虔だから愛するのか、それとも神々が愛するから敬虔なのか」。この問いが作品の中心をなし、結局、エウテュプロンは自分の定義を守り切れず、対話は決着がつかないまま閉じられる。

【影響と意義】

善悪の根拠を神の命令に求める神命説に対する、ギリシアの多神教を背景にプラトンが最初に示し、今なお論じられ続けている批判として、本書は宗教倫理学の出発点に立つ。トマス・アクィナス、ライプニッツらの答え、近代の倫理学者による反論、現代のリチャード・スウィンバーンやロバート・アダムズ、さらに世俗的倫理学者の議論は、いずれもこの問いへの応答として展開されてきた。

【なぜ今読むか】

「なぜそれが正しいと言えるのか」と問われる場面は、信仰を持つ人にも持たない人にも訪れる。外部の権威に善悪を預けてよいかを吟味する最短の練習として、本書の十数ページは今もきわめて効果的な思考訓練になる。

著者

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