キ
『キリスト者君主の教育』
きりすとしゃくんしゅのきょういく
デジデリウス・エラスムス·近代
戦争を否定し君主の徳育を説く人文主義の政治論
哲学政治哲学
この著作について
1516年にエラスムスが将来の皇帝カール5世に献呈した君主教育論である。原題は『Institutio principis Christiani』。同時期のマキャヴェッリ『君主論』とほぼ同年代に書かれた書物でありながら、対極の理念を提示する点で哲学史的に重要な位置を占める。
【内容】
本書は君主の選定、教育、課税、戦争など多岐にわたる主題を扱う。エラスムスはキリスト教人文主義の立場から、君主は何よりもまず徳を備えた人格でなければならず、武力よりも知恵と慈愛によって統治すべきだと説く。とりわけ戦争に対しては徹底して批判的で、いかなる戦争も最終手段でなければならないとする平和主義の論調が貫かれている。
【影響と意義】
権力の現実から出発するマキャヴェッリと、徳と理想から出発するエラスムスの対比は、近代政治思想の二つの源流を象徴する。本書は16世紀ヨーロッパの宮廷教育に広く影響を与え、後のグロティウスやカントの平和論の系譜にもつながる。
【なぜ今読むか】
国際政治における力の論理が再び前景化する現代において、徳と平和を統治の核に据える本書は、為政者の倫理を問い直すための古典として読み返す価値がある。
著者
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