道
『道元《どうげん》入門』
どうげんにゅうもん
角田泰隆·現代
道元の禅思想を解説した入門書
宗教入門
この著作について
曹洞宗の僧侶でもある道元研究者・角田泰隆《つのだたいりゅう》が、鎌倉仏教の巨人・道元《どうげん》の教えと生涯を平易に描いた入門書。
【内容】
本書はまず、比叡山で出家した若き道元が宋に渡り、天童山で如浄《にょじょう》のもとで坐禅を徹底して行じて大悟した経緯を辿る。帰国後に『普勧坐禅儀《ふかんざぜんぎ》』を著し、深草興聖寺《こうしょうじ》を開き、のちに越前に永平寺を開くまでの生涯を描く。そのうえで『正法眼蔵《しょうぼうげんぞう》』の核をなす只管打坐《しかんたざ》(ただ坐ること)、修証一等(修行と悟りは一つ)、現成公案《こうあん》(この瞬間に真理が立ち現れる)、有時(時間と存在は一つ)、身心脱落《しんじんだつらく》といった概念が、日常語に置き換えて解説される。『典座教訓』『赴粥飯法《ふしゅくはんぽう》』にも触れて、食事や労働のなかの修行の思想が紹介される。
【影響と意義】
道元は和辻哲郎《わつじてつろう》、田辺元《たなべはじめ》、中野重治《なかのしげはる》らによって哲学的・文学的に読まれ、近代日本思想の重要な源泉となってきた。本書はそうした哲学的読みに至る手前で、まず道元自身の言葉に触れるための信頼できる案内役となる。
【なぜ今読むか】
情報と効率に追われる日常に、「この一息この一歩の重みをすべてと思う」道元の視座は、時間と身体の感覚を静かに整え直してくれる。入門書に安易さを感じてきた読者にとって、落ち着いた導き手となる。