金
『金剛般若経《はんにゃきょう》』
こんごうはんにゃきょう
古代
般若経典群の核心、慧能を発心させた大乗仏教の主要経典
哲学アジア
この著作について
正式名は『金剛般若波羅蜜経』。サンスクリット原典から鳩摩羅什(5世紀)によって漢訳され、東アジア大乗仏教の中心経典の一つとなった。慧能がこの経の「応無所住而生其心(まさに住する所なくしてその心を生ずべし)」の一句を聞いて発心したと『六祖壇経《ろくそだんきょう》』に伝わる、禅宗にとって特別な経典である。
【内容】
ブッダと弟子・須菩提(スブーティ)の問答形式で進む。あらゆる相(固定的な特徴)への執着を退け、菩薩は布施を行うときも布施する我・布施される他者・布施する物の三輪を空と観じ、相に住しないで行うべきだと説く。「一切の相に住すべからず」「凡そ所有る相は皆これ虚妄」「過去心・現在心・未来心、いずれも得べからず」など、般若の智慧を簡潔な定式で繰り返し提示する。
【影響と意義】
中国・朝鮮・日本・チベットで広く読誦され、特に禅宗では『般若心経《はんにゃしんぎょう》』と並んで根本経典の地位を占めてきた。慧能が南宗禅の核心思想を本経の一句から引き出したことから、中国禅の精神的源泉として位置づけられる。9世紀の敦煌で発見された印刷版(868年)は、世界最古の年代付き印刷物として知られる。
【なぜ今読むか】
短く簡潔ながら、執着を手放す姿勢の極致を示す経典として今も実践的価値を持つ。「住する所なくして心を生ぜよ」という一句は、現代のマインドフルネスや認知的脱フュージョンの源流の一つとして読み直せる。
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