動
『動物の権利擁護論』
どうぶつのけんりようごろん
トム・リーガン·現代
動物に内在的価値と権利を認める義務論的動物倫理の代表作
倫理動物
この著作について
ノースカロライナ州立大学の哲学者トム・リーガン(1938〜2017)が1983年に公刊した、動物倫理学の代表的著作(原題『The Case for Animal Rights』)。シンガーの功利主義的アプローチに対し、義務論的アプローチから動物の権利を擁護する記念碑的書である。
【内容】
リーガンは、ある程度発達した心的能力を持つ動物(少なくとも哺乳類の成体)は「生の主体(subject-of-a-life)」であり、欲求、信念、記憶、感情、心理的同一性を持つと論じる。これらの動物は、それ自身として価値(inherent value)を持ち、単なる手段として扱われてはならない。これはカントの目的の王国の思想を動物に拡張したものである。本書は、シンガーの『動物の解放』が功利計算によって個体の価値を相対化してしまう問題を批判し、より強い権利論的立場を展開する。動物実験、工業的畜産、狩猟など具体的問題への適用も論じられる。
【影響と意義】
シンガーと並び、現代動物倫理学の二大潮流の片方を確立した。動物権利運動(特に米国の PETA)の理論的基盤となり、現代の動物福祉法・倫理委員会の議論に深く影響している。日本では戸田清らによる紹介を経て、応用倫理学の重要文献として参照される。
【なぜ今読むか】
培養肉・植物性代替食・動物実験規制など、人間と動物の関係を問い直す21世紀の議論で、本書の論証はなお決定的である。