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『ケアの社会学』
けあのしゃかいがく
上野千鶴子《うえのちづこ》·現代
介護労働を社会学的に解剖した上野千鶴子《うえのちづこ》の現代的主著
社会思想政治
この著作について
東京大学名誉教授・上野千鶴子(うえの・ちづこ)が2011年に太田出版から刊行した高齢期介護をめぐる社会学的主著。副題は「当事者主権の福祉社会へ」。上野自身が長年にわたり当事者研究を進めてきた成果を、社会学的理論と政策提言の双方で展開した、日本のケア論の中核的著作である。
【内容】
本書は「ケア」を家族内の無償労働として自明化する伝統的福祉観を解体することから出発する。上野はケアを労働・関係・権力・倫理の四つの側面をもつ複合的現象として再定義し、介護保険制度施行(2000年)以後の日本社会に生じた構造変化を分析する。家族介護の崩壊、介護労働の低賃金化、ジェンダー不均衡、移民介護労働、介護老人ホーム・グループホームの多様化、当事者の声の反映、地域包括ケアシステムの理念と限界を、具体的な統計と当事者インタビューで検証する。「当事者主権」の理念が本書を貫く規範軸として機能し、介護を受ける側の決定権を中心に据える福祉設計が構想される。
【影響と意義】
本書は上野の『家父長制と資本制』『老いる準備』『おひとりさまの最期』と連なる一連の著作の中核をなし、日本のフェミニズム・介護福祉学・社会政策論・高齢社会論に広範な影響を与え続けている。市民社会論・ケア倫理・プラットフォーム協同組合論との対話のなかで、日本発のケア研究の代表的到達点として国際的にも読まれている。
【なぜ今読むか】
超高齢社会と介護人材不足が社会保障の根幹を揺さぶる現在、自分や家族のケアを考える具体的な思考の枠組みとして、なお最強の一冊である。