美
『美について』
びについて
今道友信·現代
美学の根本問題を幅広く論じた今道友信の日本語入門書
哲学
この著作について
東洋美学と中世哲学の双方を専門とする今道友信《いまみちとものぶ》が、戦後日本の美学を広く一般読者に開いた岩波新書の名著。
【内容】
本書は「美しい」という言葉の日常用法から説き起こし、古代ギリシアにおけるカロカガティア(美と善の一致)、プラトンのイデアとしての美、アリストテレスの倫理における美、中世神学が扱った崇高、カントの美的判断、シラーの遊戯衝動、ヘーゲルの芸術の歴史性など、西洋美学史のエッセンスを順に解きほぐす。並行して、東洋の「雅」「風流」「幽玄」「わび・さび」「粋《いき》」などの美的範疇が論じられ、特に日本の美意識を世界美学のなかにどう位置づけるかが丁寧に議論される。自然美、崇高、醜、芸術と道徳の関係など、古典的論点を抑えつつ、広告や映画に及ぶ同時代の芸術状況にまで目が向けられている。
【影響と意義】
日本語で書かれた美学の良質な通史として、大学の美学概論から一般読者の教養書まで幅広く読まれてきた。著者は後に国際美学会会長も務め、東西美学の対話を主導した人物でもあり、本書はその活動の出発点に位置する。
【なぜ今読むか】
インスタグラムや生成AIが「美」を日々大量生産する時代に、美しさの語彙と基準の歴史を一度俯瞰しておくことは、自分が何を美しいと感じるかを考え直す手がかりとなる。短く読めて奥行きのある入門書である。