幸
『幸福について』
こうふくについて
ショーペンハウアー·近代
ショーペンハウアーが苦しみと欲望の関係を鋭く分析した人生論の名著
哲学
この著作について
ショーペンハウアーが晩年に刊行した随筆集『余禄と補遺』の中から、人生論にかかわる章を独立して編んだ実践的幸福論の古典。
【内容】
冒頭でショーペンハウアーは、幸福を決める要素を「その人が何であるか(人柄)」「何を持っているか(財産・名誉)」「他人からどう見られているか(評判)」の三つに整理する。著者がもっとも重視するのは第一の内面的性質であり、健やかな身体と柔らかな心、そして孤独に耐える能力こそが生涯の幸福を左右する。続く章では、青年期と老年期の違い、友情、妬み、寂しさ、名誉欲、読書、社交のほどほど、退屈への処方、老年の楽しみなどが、皮肉と警句をちりばめた文体で論じられる。徹底した悲観主義の奥底から、それでも落ち着いて生きるための知恵が絞り出される。
【影響と意義】
十九世紀末から二十世紀にかけてヨーロッパでベストセラーとなり、ニーチェ、フロイト、トーマス・マン、ウィトゲンシュタインに読み継がれた。日本でも明治以来、処世哲学の名著として愛され、漱石や鴎外の語彙にも影を落としている。
【なぜ今読むか】
ポジティブ一辺倒の処方箋に疲れたとき、「満ち足りた幸福は望むべくもないが、苦しみを減らすことはできる」と冷静に助言してくれる本書は、落ち着いた大人の読書体験を提供する。皮肉の効いた格言は、気楽に開けるぶん長く効く。
著者
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