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アナーキー・国家・ユートピア

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ノージック·現代

最小国家をリバタリアンの立場から擁護した政治哲学の挑戦作

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政治

この著作について

ハーバード大学の哲学者ロバート・ノージックが1974年に公刊した、ロールズ正義論に対抗する形で個人の権利に基づく最小国家を擁護した政治哲学の名著。

【内容】

全3部構成。第1部は、国家なき「自然状態」からどのようにして自発的に最小国家が生まれうるかを、見えない手的な仕方で説明する。第2部で、治安維持と契約履行以上のことをする国家(再分配を行う国家など)は、個人の権利を侵害するがゆえに正当化できないと論じる。有名な「ウィルト・チェンバレン」の思考実験では、各人が自由意志で好きな選手に入場料を払った結果として富の偏在が生じるなら、それは不正義とは呼べないとし、ロールズの格差原理を批判する。第3部では、それでも人が何を選ぶかは自由であるという意味で、最小国家こそ「ユートピアの枠組み」だと位置づけられる。

【影響と意義】

ロールズとの対決は20世紀後半の政治哲学を劇的に活性化させ、英米の政治哲学の対立軸を形成した。リバタリアニズムの代表的著作として、小さな政府論・自由市場論の理論的基盤を提供している。

【なぜ今読むか】

ロックの但し書き」や「ウィルト・チェンバレンの例」など、具体的な思考実験を通じて権利と分配の問題を考えさせる手際が見事。ベーシック・インカムから富裕税まで、分配をめぐる現代の議論に参加するための必読書。

さらに深く

【内容のあらまし】

ノージックは冒頭で立場を明示する。個人には侵してはならない権利があり、これを越えて何かを行う国家は正当化されない。本書は三つの問いに答えるかたちで進む。国家はそもそも正当化できるのか。できるとして、どこまでが許されるのか。それは魅力的な社会だろうか。

第一部で国家の起源を、ロックの自然状態論の延長で描き直す。最初は誰もが自分の権利を自力で守る世界がある。やがて私的な保護協会が生まれ、契約者の権利を守るために他の協会と取引や競合を繰り広げる。地域ごとに支配的な保護協会が現れ、独立人を取り込んでいく過程が分析される。重要なのは、誰も意図しない形で、最小国家が見えない手のように立ち上がってくる、というシナリオである。これによって、暴力や不正な簒奪なしに国家がいかに権利侵害を伴わずに生まれうるかが示される。

第二部で再分配を行う国家への批判が展開される。ノージックは正義の権原理論を提示する。何かを正当に取得し、それを正当に譲渡したのなら、その帰結としてどれほどの分配の偏りが生じても不正ではない。ここで有名なウィルト・チェンバレンの例が登場する。優れたバスケットボール選手の試合に、観客が一人ひとり自発的に入場料を多めに払う。結果として彼の手元に莫大な富が積み上がる。誰も他人の権利を侵害していないのに、出発点での平等な分配は崩れている。これを是正するためには、人々が自由意志でお金を渡し合うことを強制的に止めなければならない。これが、結果ベースの分配的正義論への根本的な反論となる。ロックの「ただし他人にも十分な質と量を残しておくこと」という但し書きの再解釈、自分の身体の所有権、課税は強制労働に等しいという議論などが続く。

第三部はユートピアの章である。私たちは互いに違う価値観を持っている以上、ある一つの理想社会をすべての人に押しつけるのは無理がある。ノージックが提案するのは、さまざまな共同体が並存し、人々が自由に移動して自分に合うものを選べる枠組みとしての最小国家である。最小国家は最も慎ましく、しかしそれゆえに最も多様なユートピアを許容する場となる、と論じて本書は閉じる。

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