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リンカーン演説集

りんかーんえんぜつしゅう

エイブラハム・リンカーン·近代

リンカーンの主要な演説を集めた著作集

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政治

この著作について

アメリカ合衆国第十六代大統領エイブラハム・リンカーンの主要な演説を集めた著作集で、近代民主主義の基本文書の一つ。

【内容】

本書は、南北戦争最中にわずか二百数十語で行われた「ゲティスバーグ演説」(「人民の、人民による、人民のための政治」)を中心に、奴隷解放とアメリカの贖罪を訴えた「第二次就任演説」、共和党の発足期を象徴する「ハウス・ディヴァイデッド」演説、反奴隷制の論理を精緻に展開した「クーパー・ユニオン演説」、友人への書簡などを収める。独立宣言の平等原理を、内戦という極限の試練のなかでいかに護り抜くかを語る言葉が、全体を貫く主題となる。

【影響と意義】

アメリカ民主主義の自己理解の源泉となり、以後の政治演説の範型となった。マーティン・ルーサー・キング・Jrの「私には夢がある」演説、オバマやケネディら大統領の就任演説は、いずれもリンカーンの言語的遺産を引き継いでいる。近代修辞学・政治コミュニケーション論の古典でもある。

【なぜ今読むか】

聖書と独立宣言の韻律を下敷きにした簡潔で格調高い文体に、深い悲哀と民主主義への信念が同居している。民主主義が揺らぐ時代に、危機の政治家がどう言葉で国を立て直そうとしたかを確かめるための、短く濃密な古典である。

さらに深く

【内容のあらまし】

本書は時代順に並んだ十数篇の演説と書簡で構成され、内戦に向かうアメリカが言葉によってどう自らを問い直したかを追える。出発点は一八五八年の上院選で行われた「分かれた家」演説である。新約聖書の譬えを下敷きに、リンカーンは「自らに分かれた家は立つことができない」と切り出し、奴隷制をめぐる妥協は破綻すると宣言する。続くダグラスとの一連の討論は、奴隷制の道徳的問題と憲法解釈をめぐる近代政治論争の古典である。

大統領就任前の山場が、一八六〇年のクーパー・ユニオン演説だ。建国の父たちが連邦議会の権限で奴隷制の拡大を制限してきた歴史を、史料に即して几帳面に列挙する。ニューヨークの聴衆を前に、感情ではなく事実によって語ったこの講演は、リンカーンを大統領候補に押し上げた。

第一次就任演説では、南部諸州への呼びかけが胸を打つ。連邦は永続するものであり、戦端は開かないが連邦の財産は守ると述べたうえで、最後に「我々の本性のより善き天使」が両者を再び結びつけることを願うと結ぶ。やがて戦争が始まり、奴隷解放宣言、ホレース・グリーリーへの公開書簡、戦没者への手紙が続く。

本書の核心はゲティスバーグ演説である。一八六三年十一月、戦没者墓地の献堂式で行われた二百数十語のこの演説は、独立宣言の「すべての人は平等に造られた」を起点に、内戦を建国理念の試練と位置づけ、「人民の、人民による、人民のための政治」が地上から消えないよう誓って終わる。一年半後の第二次就任演説では、戦争を北部と南部双方の罪に対する神の裁きとして引き受け、「何人にも悪意を抱かず、すべての人に慈愛を持って」傷を癒やそうと呼びかける。フォード劇場での暗殺はその六週間後だった。短い演説のなかで国家の自己理解を書き換えた、政治的言語の極限の達成として読める書物である。

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