
チェ・ゲバラ
Che Guevara
1928年 — 1967年
革命の象徴となったラテンアメリカのゲリラ指導者
この人物について
理想のために命を賭した永遠の革命家であり、ラテンアメリカから第三世界解放運動まで影響を与えたキューバ革命の英雄。
【代表的な著書・業績】
『ゲリラ戦争』は革命戦略の実践的教本として広く読まれ、青年期の南米縦断の記録『モーターサイクル・ダイアリーズ』は彼の思想的覚醒を物語る古典となった。カストロ兄弟と共に1959年のキューバ革命を成功させ、工業相・国立銀行総裁を務めた後、コンゴ・ボリビアのゲリラ戦に身を投じ、1967年に捕らえられて処刑された。
【思想・考え方】
マルクス主義に基づく反帝国主義・反資本主義の立場から、ラテンアメリカの解放と世界革命を目指した。物質的利益ではなく道徳的動機によって働く「新しい人間」の創造を掲げ、利己心を超えた連帯と自己犠牲の精神を理想とした。先進的な政治状況がなくても革命は可能だとする農村ゲリラ戦(フォコ理論)を体系化し、武装闘争を戦略として位置づけた。
【特徴的な点】
アルゼンチン出身の医師でありながらキューバ革命に身を投じた越境的革命家であり、権力の座を捨てて現場に戻った点でも異色の存在である。アルベルト・コルダの撮影したベレー帽の肖像は世界的アイコンとなった。
【現代との接点】
反体制運動や社会正義の象徴として引用される一方、暴力革命の是非や権力下での処刑への関与をめぐって評価は割れ続けている。
さらに深く
【生涯と行動】
エルネスト・チェ・ゲバラ(1928〜1967)は、アルゼンチンのロサリオにスペイン・アイルランド系の中産階級の家の長男として生まれた。喘息に苦しみながら運動と読書に打ち込み、ブエノスアイレス大学で医学を修めた。1952年と1953年の二度にわたる南米大陸放浪で、鉱山労働者やハンセン病患者の現実に触れ、ラテンアメリカ全体を一つの病として診断する政治的覚醒を得た。メキシコ亡命中の1955年にフィデル・カストロと出会い、12人の同志と共にグランマ号でキューバに上陸、シエラ・マエストラでのゲリラ戦を経て1959年の革命を成功させた。革命政府では国立銀行総裁、工業相を歴任、1965年に姿を消し、コンゴでの武装闘争を経てボリビア山中でゲリラ活動中に捕らえられ、1967年10月9日に銃殺された。39歳であった。
【政治思想の核心】
ゲバラ思想の核心は、経済的動機だけで動く「旧い人間」ではなく、物質的報酬よりも道徳的動機と連帯に生きる「新しい人間」の創造である。ソ連型の市場的インセンティヴに依存する社会主義を批判し、ボランティア労働と意識変革を通じた倫理的な社会構築を目指した。『ゲリラ戦争』は、少数の職業革命家が農村に根拠地を築き民衆と融合するフォコ理論を体系化し、都市労働者中心のマルクス・レーニン主義に修正を加えた。反帝国主義闘争をラテンアメリカ一地域にとどめず、アフリカ・アジアを含む三大陸の同時革命として構想した点が、その普遍主義の独自性である。
【影響と評価】
1960年代以降の第三世界解放運動、西側の新左翼、サパティスタ運動にまで、その戦略と倫理は波及した。アルベルト・コルダが撮ったベレー帽の肖像は、20世紀で最も複製された政治的イコンとなった。一方、ゲリラ理論の単純な一般化は多くの国で失敗を招き、キューバ革命法廷での処刑指揮や権威主義的傾向は批判的検証の対象である。正義のための暴力は許されるかという根本問題の最も劇的な事例として、現代の政治倫理学でも参照され続けている。
【さらに学ぶために】
『モーターサイクル・ダイアリーズ』と映画版が入門として入りやすい。理想のために生きて死んだ生涯は、理念と暴力の関係を逃げずに考えるための最良の素材である。

