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『わが信仰はいずれにありや』
わがしんこうはいずれにありや
レフ・トルストイ·近代
山上の垂訓を核に教会と国家を批判する宗教論
哲学宗教キリスト教ロシア文学
この著作について
レフ・トルストイが1884年に書き上げた宗教論。前作『懺悔』で「自分は何を信じてきたのか」と問うた地点から一歩進み、「自分はいま何を信じているか」を体系的に語ろうとした、後期トルストイ思想の出発点となる著作である。ロシア国内では発禁となり、長くジュネーヴや海外で流通した。
【内容】
核となるのはマタイ福音書の山上の垂訓、とりわけ「悪に手向かうな」という非抵抗の戒めである。トルストイは、この一句こそイエスの教えの中心だと読み、これを骨抜きにしてきた制度教会と、暴力装置としての国家の双方を激しく批判する。誓い、裁判、戦争、死刑、私有財産制への加担を退け、各人が労働しつつ隣人を愛して暮らす素朴なキリスト教倫理を提示する。聖書の歴史的・神話的部分は思いきって削ぎ落とされ、生きるための実践的指針としての福音書像が前面に立てられる。
【影響と意義】
ガンディーが本書を読んでサティヤーグラハ(非暴力抵抗)の着想を深めたことで知られ、20世紀の非暴力思想の重要な源流の一つとなった。日本でも内村鑑三や有島武郎ら一連の知識人に強い影響を与え、トルストイ主義と呼ばれる生活運動を生み出した。
【なぜ今読むか】
制度宗教の言葉が痩せた時代に、聖書を生活の指針としてもう一度読み直そうとする一個の知性の格闘は、信仰の有無を問わず示唆に富む。
著者
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