幽
『幽玄とさびの美学』
わびさびの にほんぶんかろん
西村清和·現代
美学的観点から日本固有の美意識である「侘び《わび》」と「さび」の概念を分析し、日本文化の審美的基盤を論じた著作
哲学
この著作について
美学者・谷川渥《たにがわあつし》が、日本固有の美意識とされる「侘び」と「さび」を西洋美学の枠組みと比較しながら哲学的に分析した日本文化論。
【内容】
本書はまず、「侘び(わび)」「さび(さび)」という語の歴史的変遷をたどる。中世以来の詩歌・連歌・茶の湯の語彙として蓄積されてきたこれらの概念が、近世に至って美意識の核として結晶する過程が追跡される。続いて、西洋美学における崇高、優美、ピトレスク、ピクチャレスク、メランコリーなどの概念と対照しながら、不完全さ、古びたもの、寂れたもの、欠如へ向かう美、老いと時間の刻印への感受性が、独自の美学的範疇として位置づけ直される。九鬼周造《くきしゅうぞう》『「いき」の構造』、西田幾多郎《にしだきたろう》の美学、現代のミニマリズム受容との関係にも目が配られる。
【影響と意義】
岡倉天心以来の「日本文化独自論」が神秘化・他者化に陥りやすい傾向を批判しつつ、侘び・さびを世界美学の文脈に据え直した試みとして評価される。建築、デザイン、クラフト、茶道論の現場でも参照されることが多い。
【なぜ今読むか】
ミニマリズムや日本的デザインが世界的ブームとなるなかで、「なぜ古びたものを美しいと感じるのか」を自分の言葉で説明できることは、文化的な発信力にもつながる。感受性の輪郭をはっきりさせてくれる一冊である。