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論理哲学論考

ろんり てつがく ろんこう

ウィトゲンシュタイン·現代

「語りえぬものについては沈黙しなければならない」

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哲学

この著作について

ウィトゲンシュタイン第一次世界大戦中、オーストリア軍の前線で書き継ぎ、1921年に公刊した前期の主著。

【内容】

7つの基本命題と、それらを小数点形式で細分化した注釈からなる、極めて簡潔な構成。「世界は成立している事態の総体である」から始まり、言語は世界を写す像であるとする「写像理論」を展開する。命題は事実と対応することで有意味となり、論理的に語りうることの限界は、同時に世界の限界でもあると論じられる。倫理・美学形而上学・宗教的なものは、その限界の向こう側にあり、語ることはできず「示される」だけだと位置づけられる。最後の命題「語りえぬものについては沈黙しなければならない」は哲学史上もっとも有名な結語の一つである。

【影響と意義】

ウィーン学団に決定的な影響を与え、論理実証主義を経由して分析哲学の出発点となった。ウィトゲンシュタイン自身は後に本書の写像理論を自己批判し、後期の哲学探究で言語ゲーム論へと転じるが、その転換の基準点としても本書は外せない。

【なぜ今読むか】

わずか100ページほどの薄い本だが、一文一文が凝縮された深い意味を持つ。何が語れて何が語れないか、を静かに考えさせる。繰り返し読むたびに新しい理解が開ける不思議な書物。

さらに深く

【内容のあらまし】

本書を開くと、まず目に入るのは番号の並びの異様さである。1、1.1、1.11というように小数点で枝分かれする命題群が、本文のすべてを構成している。冒頭の「1 世界は成立している事態の総体である」から始まり、世界、事実、事態、対象、像、思考、命題、論理、神秘、沈黙へと、階段を一段ずつ上っていく。

第一段階で世界は対象の集まりではなく、対象が組み合わさった事態の網として描かれる。続く第二段階で像の理論が導入される。命題は文字の列ではなく、現実の事態を写す絵のようなものであり、絵が対象の配置を真似るように、命題も対象同士の論理的配置を写し取る。だから命題が真であるか偽であるかは、写された配置が現実と合うか合わないかで決まる。

中盤、論理学の位置が定められる。トートロジーは何の情報も持たないが、世界の限界を内側から描き出す。逆に矛盾は何も語らない。意味を持つ命題は、この二つの極のあいだで、ある一つの可能性を選び取る働きをするものだとされる。

後半に進むと、語りうるものと語りえないものの境界が引かれていく。倫理、美、宗教、人生の意味、自我といった主題は、世界の内部の事実ではないため、命題で写すことができない。これらは語ることはできず、ただ示されるだけだ。哲学の問いの多くは、語の使い方の混乱から生じる擬似問題であり、正しい論理分析によって解消される、と論じられる。

結末近くで、はしごの比喩が現れる。読者は本書の命題を足がかりとして登りきった後で、そのはしごを投げ捨てなければならない。理解した者は、本書の命題自体が無意味だと気づく。そして最後の命題、語りえぬものについては沈黙しなければならない、で本は閉じる。論理の極限で、論理を超えるものへの敬意がそっと差し出される構成である。

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