転
『転位のための十篇』
てんいのためのじゅっぺん
吉本隆明·現代
戦後詩の画期となった吉本の第二詩集
哲学詩戦後思想
この著作について
【内容】吉本隆明が1953年に自家版で刊行した第二詩集である。戦争体験を踏まえた「転向」と自己再構築をモチーフに、十篇の詩を通じて戦後の倫理を語り起こす。前年の『固有時との対話』が内面の時間に沈潜した作品とすれば、本作は他者と政治へ転位(移動)する自己を主題化する点に特徴がある。
【影響と意義】『固有時との対話』と並び戦後詩の画期と評され、後の『芸術的抵抗と挫折』『転向論』など吉本の評論活動の原型をかたち作る詩篇群である。戦中派詩人の沈黙でも、新世代詩人の楽天的近代主義でもない、独自の戦後詩の倫理を切り開いた。詩と思想を一体のものとして書き続けた吉本の方法論的出発点となる。
【なぜ今読むか】戦後民主主義の建前と実存の溝を引き受けようとする本作の姿勢は、価値観が分裂する現代でも有効である。短い詩篇に凝縮された思考の密度を味わうことは、論理的言語の手前にある思惟の在り処を確かめることでもある。
著者
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