正
『正義の領分』
せいぎのりょうぶん
マイケル・ウォルツァー·現代
多元的正義論を提唱したコミュニタリアン政治哲学の代表作
政治倫理
この著作について
プリンストン大学の政治哲学者マイケル・ウォルツァーが1983年に公刊した、多元的正義論を提唱する代表作(原題『Spheres of Justice』)。ロールズの普遍主義的正義論への重要な対案として位置づけられる。
【内容】
ウォルツァーは「複合的平等(complex equality)」という独自の正義観を提示する。単一の普遍的原理が全領域に適用されるのではなく、社会には複数の「分配領域(spheres)」(市場、医療、教育、政治権力、市民権、家族、神聖なものなど)が存在し、それぞれの領域には固有の善と分配原理がある。重要なのは、ある領域での優位(例:富)が他の領域(例:政治権力や医療)を支配しないこと。これが「支配の阻止」としての正義である。市民権、安全保障、医療、職務、教育などの領域を順次分析し、それぞれの分配の論理を社会の歴史的・文化的文脈から導く。
【影響と意義】
ロールズの抽象的・普遍主義的アプローチに対し、社会の文脈に根ざした正義論を提示した点で画期的。コミュニタリアニズム、社会民主主義、サンデルらと並ぶリベラルへの対抗軸となった。医療資源分配・教育の正義論などに今も応用される。
【なぜ今読むか】
格差・分配をめぐる現代の論争で「お金で買えるべきもの・買えないもの」を考えるための基礎枠組みを与える。