縁
『縁起《えんぎ》の思想』
えんぎのしそう
三枝充悳·現代
縁起思想の歴史的展開を包括的に論じた専門書
哲学文化・宗教
この著作について
仏教学者・三枝充悳《さいぐさみつよし》が、仏教思想の中心概念である「縁起」の歴史的展開を丁寧に辿った学術的研究書。
【内容】
本書はまず、釈迦の最初期の教説である十二縁起《じゅうにえんぎ》の成立過程を、原始経典の読解から再構成する。続いて、部派仏教のアビダルマにおける業と縁起の精緻化、龍樹《りゅうじゅ》の中観派における「縁起=空」の論理的展開、唯識《ゆいしき》派による「阿頼耶識《あらやしき》と縁起」の解釈、中国仏教における天台智顗《ちぎ》の一念三千《いちねんさんぜん》、華厳の法界縁起、日本仏教における空海《くうかい》の即身成仏《そくしんじょうぶつ》の論理までが体系的に論じられる。単なる因果論としての縁起から、相互依存の存在論、さらに万物の重層的絡み合いとしての縁起へと、概念が深化していく過程が浮かび上がる。
【影響と意義】
縁起思想を個別学派の教義ではなく、仏教思想全体を貫く生成の論理として通史的に捉え直した著作として、仏教学研究の基本文献となっている。環境倫理、システム思考、相互依存を重視する現代の哲学的潮流にも、遠くから呼応する仕事として読み直されている。
【なぜ今読むか】
気候変動、サプライチェーン、パンデミックなど、「すべては繋がっている」という実感が強まる時代に、縁起の思想は単なるスローガン以上の深みを持つ。古代から現代までの思想史を通して、それを本気で考える手がかりが得られる。