理
『理由と人格』
りゆうとじんかく
デレク・パーフィット·現代
人格の同一性と未来世代への義務を論じた現代倫理学の金字塔
哲学倫理
この著作について
デレク・パーフィット(Derek Parfit)が1984年に刊行した分析哲学・倫理学の主著(原題『Reasons and Persons』)。二十世紀後半の分析倫理学を代表する書物として、英米哲学界で繰り返し引用されてきた記念碑的著作である。
【内容】
本書は四部構成をとる。第一部は自己利益説の自己論破的性格を精密に示し、第二部は合理性と道徳の関係を再検討する。第三部では人格の同一性を論じ、テレポーテーションや脳の半分分裂などの思考実験を通じて、人格は時間を通じて厳密な同一性を保つのではなく、心理的連続性と連結性の程度問題にすぎないという還元主義的見解を擁護する。この見解からは、自らの将来の快苦に対する合理的配慮もまた、他人の快苦への配慮と連続的に並ぶ一部となる。第四部は未来世代への義務を論じ、「非同一性問題(Non-Identity Problem)」を定式化する。現在の政策が未来の誰が生まれるかを左右するとき、その未来人に対して危害を与えたと言えるかという困難な問いが展開される。
【影響と意義】
人格同一性論、功利主義と合理的選択理論の基礎、世代間倫理、応用倫理学、さらには仏教の無我論との対話を通じ、現代倫理学の中心的論争点の多くを定義した。彼の後期著作『On What Matters』とともに、分析哲学の規範的転回を象徴する。
【なぜ今読むか】
気候変動政策・AI未来論・ベーシックインカム論など、現在の意思決定が未来の人格を規定する局面で、パーフィットの議論は哲学的装備として日々有効性を増している。