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道徳性の起源

どうとくせいのきげん

フランス・ドゥ・ヴァール·現代

チンパンジーから人間の道徳性の進化的基盤を描いた霊長類学者の代表作

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科学倫理

この著作について

フランス・ドゥ・ヴァール(Frans de Waal)が2013年に刊行した道徳倫理学と進化生物学の交差領域に立つ著作(原題『The Bonobo and the Atheist: In Search of Humanism Among the Primates』の邦題としても使用される系列の一冊)。霊長類学の長年の観察成果から、道徳性を人間だけの独占物としてではなく進化の産物として描き出す、ドゥ・ヴァールの倫理学的総決算である。

【内容】

本書は、チンパンジーやボノボにおける共感・和解・公平感覚・協力行動の具体例を豊富に提示しつつ、道徳性が文化や宗教以前に進化的基盤を持つことを論証する。ボノボの雌同士の親密さ、不公平な分配への抗議、仲間の死を悼む振る舞い、他個体の窮状に自発的に応じる利他行動などが、実験映像・野外観察・対照研究とともに検討される。理論的枠組みとしては、情動的共感から認知的共感への進化、公平感覚の系統発生、神経科学との接続が論じられ、宗教的倫理は進化したモラル感覚の文化的整備物として相対化される。宗教なき倫理の可能性を誠実に探る哲学的エッセイとしても読める。

【影響と意義】

本書はピーター・シンガー実践の倫理、マーク・ハウザー『モラル・マインド』、マイケル・シャーマー『なぜ進化論は人間を作るのか』と並び、進化倫理学・神経倫理学・比較心理学の中核文献として大学教育に採用されている。日本では京都大学霊長類研究所の国際的共同研究とも呼応している。

【なぜ今読むか】

政治の分極化と価値観の衝突が深まる時代、道徳の共通基盤を進化の時間軸で確かめることは、対話のための重要な足場を提供してくれる。

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