実
『実践の倫理』
じっせんのりんり
ピーター・シンガー·現代
選好功利主義を動物・貧困・生命倫理に応用したシンガーの代表的著作
哲学
この著作について
オーストラリア出身の哲学者ピーター・シンガーが、自らの選好功利主義を応用倫理の諸問題に一貫して適用した代表作で、生命倫理・動物倫理・世界貧困論の基本文献。
【内容】
本書はまず「すべての関係者の利益を平等に考慮すべき」という倫理の基本原理を提示する。そこから、動物の苦痛を人間のそれと同じ重みで扱うべきだという動物解放論、胎児や新生児、重度の障害を持つ者の道徳的地位、中絶と安楽死の線引きの問題、裕福な先進国の人間が世界の絶対的貧困に対して負う義務、環境保護・気候変動の倫理、戦争と難民の受け入れ、さらには富と分配の問題までが次々と論じられる。直観に強く逆らう主張も含まれるが、「選好を持つ存在の利益」という一本の物差しで議論が貫かれる。
【影響と意義】
現代の動物倫理・効果的利他主義・世界貧困論の理論的出発点となり、多くの実践運動に影響を及ぼしてきた。応用倫理学の教科書として英語圏の大学で最も広く採用される一冊であり、生命倫理・医療倫理の議論でもしばしば対抗軸として参照される。
【なぜ今読むか】
自分の寄付、食生活、消費行動が遠くの誰かの生死にどうつながっているかを、ごまかさず考えたい人に本書は鋭い鏡を差し出す。賛否いずれにしても、現代に生きる者の倫理感覚を鍛え直すための必読書である。