民
『民主主義理論の前史』
みんしゅしゅぎりろんのぜんし
ロバート・A・ダール·現代
民主主義理論の基礎を批判的に再構築した政治学の古典
哲学政治哲学社会思想
この著作について
アメリカの政治学者ロバート・A・ダール(Robert A. Dahl、1915〜2014)が1956年にシカゴ大学出版から刊行した『A Preface to Democratic Theory』の邦訳である。ダールが民主主義論に体系的に取り組んだ最初の書物であり、後の『ポリアーキー』『デモクラシーとは何か』へ続く一連の研究の出発点に位置づけられる。
【内容】本書はマディソン的民主主義(権力の分散と多数者の制御)とポピュリスト的民主主義(多数決の絶対化)という二つの伝統を対比し、いずれも整合的な理論として成立しがたいことを論じる。そのうえで現実の合衆国政治を観察した「ポリアーキー的民主主義」概念を提示し、複数の少数派が交渉し合う多元主義的政治過程として民主主義を再定義する。多数の専制という古典的問題、政治的平等の意味、選挙制度と政策反映の関係などが論点として展開される。
【影響と意義】戦後アメリカ政治学における多元主義論の出発点として、比較政治学・民主主義論の基礎文献となった。本書で芽生えた概念は『ポリアーキー』で完成され、リンス、サルトーリ、ハンチントンら後続の民主化研究に直接の影響を与えている。日本でも内山秀夫らの訳で広く読まれ、政治学の標準教材として参照され続けている。
【なぜ今読むか】民主主義の制度設計を理念から現実へ降ろす作業の手本として、いまなお有効である。多数決と少数派保護のバランスをどう設計するかを考える際の理論的足場を与えてくれる。