政
『政治的正義』
せいじてき せいぎ
ゴドウィン·近代
ゴドウィンのアナーキズム的著作
哲学
この著作について
フランス革命の熱気のなかでウィリアム・ゴドウィンが著した大部の政治哲学書で、近代アナーキズム思想の出発点となった記念碑的著作。
【内容】
全八巻を通じて、政府・法律・財産・結婚・宗教といった既存の社会制度が、いずれも理性的検討に耐えないと一つずつ吟味されていく。ゴドウィンによれば、人間は合理的思索によって無限に改善されうる存在であり、真理を討議しあえばやがて万人が同じ結論に達するはずである。したがって、強制力を伴う政府は真理を固定化して人々の理性を鈍らせる害悪であり、法律や罰は教育と説得で置き換えられるべきだとされる。財産は必要とする者のもとに自由に流れるべきで、婚姻制度も各人の合理的選択に委ねられるべきだと主張される。理性と討議への全幅の信頼に立つ社会構想が、穏健な語り口で徹底的に展開される。
【影響と意義】
本書はロバート・オウエンや若き日のシェリーに強い影響を与え、プルードン、クロポトキンら後続のアナーキスト・社会主義者の議論の出発点となった。娘メアリ・シェリーの『フランケンシュタイン』も、本書の理性への信頼に対する複雑な応答として読める。
【なぜ今読むか】
国家と自由の関係、財産と分配、討議民主主義の可能性など、現代政治の根本論点がほぼすべて先取りされている。理性への極端な信頼という時代的制約を踏まえたうえで、「制度の自明さを疑う」思考の訓練として、今も有益な古典である。