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パスカル·近代

「考える葦」で知られるパスカルの断想録

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哲学

この著作について

数学者・物理学者から宗教思想家へ転じたブレーズ・パスカルが、キリスト教のための護教論として構想し、17世紀半ばの早すぎる死によって未完に終わった断章集。

【内容】

生前は短冊状の紙片や帳面の切れ端に書き留められただけで、没後に弟子たちや近代の編集者が配列を整えた形で残っている。主題は、人間の「みじめさと偉大さ」の二重性、無限大と無限小のあいだに宙吊りになった人間の位置、気晴らしへの逃避、理性と心の区別、そして有名な「賭け」による信仰への誘いまでに及ぶ。「人間は考える葦である」「人間の不幸はすべて、部屋で静かに座っていられないことに由来する」などの名句が散りばめられている。

【影響と意義】

厳密な数学者の論理と宗教的情熱が同居する独特の思考は、未完のまま「人間とは何か」を直視する古典となった。実存主義の先駆としてキルケゴールドストエフスキーハイデガーに影響を与え、フランス・モラリスト文学の最高峰ともみなされている。

【なぜ今読むか】

断章ゆえに、どこから読んでも途切れない緊張感がある。一節に足を止めるとそのまま人生観が揺さぶられる。気晴らしと情報過多に疲れたとき、数ページめくるだけでも心の姿勢が立て直される。

さらに深く

【内容のあらまし】

本書には決定された目次がない。パスカルが残した断章の束を、後世の編集者が並び替えた配列で読むほかない。標準的な配列で最初に置かれるのは「精神について」と題された断章群である。「幾何学の精神」と「繊細の精神」が区別され、明確な定義から論証を積む数学的思考と、無数の微細な印象から全体を把握する感覚的思考の違いが描かれる。デカルト的明証性だけでは人間の本質に迫れない、という診断がここで示される。

次の中心主題は「人間の不均衡」である。有名な「二つの無限」の断章では、人間は星々の無限大と原子の無限小のあいだに宙吊りになった存在として描かれる。「人間は自然のなかでもっとも弱い葦にすぎない。だが考える葦である」という一節がここに置かれ、人間の弱さと尊厳の二重性が結晶する。続いて、人はみずからのみじめさを耐えるために絶えず気晴らしを求める、という洞察が来る。狩りに行くのは獲物のためではなく、走る興奮のためである。部屋に静かに坐っていられないことが、人間のあらゆる不幸の原因である、と。

中盤で論調は宗教論へと深まる。「信仰について」「ユダヤ人について」「予言について」「奇跡について」の断章群で、キリスト教信仰の合理的根拠が積み上げられる。聖書の予言の的中、ユダヤ民族の特異な歴史、そしてキリストの受難と復活の証言が並べられ、信仰は理性に反するものではなく、理性を超えながら理性と整合するものとして提示される。

本書最大の山場が「賭け」の断章である。神が存在するかしないかは理性では決定できない。しかしこの問題に「賭けない」ことはできない。神に賭ければ、勝てば無限の幸福を得て、負けても失うものはほとんどない。神に賭けなければ、勝っても得るものは有限の快楽でしかなく、負ければ無限を失う。だから信仰へ賭けるのが理性的な選択である、と。「あなたは賭けるしかない、選択ではないのだ、すでに乗り出してしまったのだから」という畳みかけが続く。

後半には「心は理性の知らぬ理由を持っている」「人は天使でも獣でもないが、天使になろうとした者は獣になる」のような断章が並び、未完のまま、しかし完結した思考の断片として残る。

著者

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