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パ

『パースの記号学』

ぱーすのきごうがく

米盛裕二·現代

日本初の本格的パース記号論解説書。記号学の全体像を5章で平明に示す。

哲学

この著作について

琉球大学名誉教授であった米盛裕二によるパース記号論の本格的解説書。1981年に勁草書房から初版が刊行され、2017年に新装版が出された。日本における初の本格的なパース記号論研究書として位置づけられる。

【内容】

全5章構成で、第1章「記号主義」、第2章「現象学とカテゴリー」、第3章「記号の概念と分類」、第4章「諸記号の概説」、第5章「プラグマティシズム」と展開する。記号と対象と解釈項からなる三項関係としての記号、イコン・インデックス・シンボルの分類、第一次性・第二次性・第三次性のカテゴリー論、そしてプラグマティシズムへと至るパース体系の核心を、平明な日本語で順序立てて示している。

【影響と意義】

難解さで知られるパースの記号論を、日本語で読み通せる体系として提示した功績は大きく、後続の日本人研究者の出発点となった。ソシュール由来の言語記号学とは異なる、現象学・論理学に根ざしたパース記号学の独自性を明確化した点でも重要である。

【なぜ今読むか】

意味と解釈の哲学に関心を持つ読者にとって、なお最良の入門書のひとつである。

さらに深く

【内容のあらまし】

本書は、まえがきに続く5章と索引からなる。著者はまえがきで、現象学、記号学、プラグマティシズムの学説を取り上げるが、主にパースの記号学とそれに関連する学説を検討するもので、パース哲学の全体系を扱うものではないと断る。パースのわかりにくい言葉を直接引用するより、自分なりの解釈で論議の連関を明確にするよう努めた箇所が多いという。版元の紹介文は、人間の認識と思考を「記号過程」と捉え、言語と記号一般の論理的な分析を知識の理論の中心に据えた人としてパースを紹介する。

第1章「記号主義」は「記号学と認識論」の節で始まり、次の節の題は「直観的認識の否定」である。パースは1868年の論文で、人間には内観の能力も直観の能力もなく、記号なしに考えることもできないと論じ、思考はすべて記号であり、生は思考の連なりだから人間は記号だと書いた。章はこのあと、推論的な表意作用としての思考、記号・人間・存在、スコラ的実在論と進む。パースは抽象的なものの実在を認め、普遍をめぐる考えは中世の実在論者に近かった。

第2章「現象学とカテゴリー」は、科学的哲学の節から入り、現象、記号、現象学を扱ったのち、三つのカテゴリーの多面性と不還元性を論じる。第一次性、第二次性、第三次性にはそれぞれ一節が当てられる。

第3章「記号の概念と分類」は、規範科学としての記号学で始まる。パースは規範科学を美学、倫理学、論理学に分けた。続いて記号学の体系、記号の概念、記号分析の原理と方法を述べる。

第4章「諸記号の概説」は三つの三分法で進む。記号それ自体のあり方による性質記号、個物記号、法則記号。表意様式による類似記号、指標記号、象徴記号で、一般にいうイコン、インデックス、シンボルにあたる。言明様式による名辞、命題、論証。論証はさらに演繹、帰納、アブダクションに分けられ、最後の節はアブダクションだけに充てられる。

第5章「プラグマティシズム」の副題は「論理的解釈内容、習慣、実際的結果」である。記号は解釈されて初めて意味を持つ。パース記号論の解釈項は解釈内容とも呼ばれ、本書の章題と節題にもこの語が出てくる。節は解釈内容の概念、論理的解釈内容、習慣と実際的結果の順に進む。パースは1878年の論文で、概念の対象が持つと考えられる実際的な効果についての考えこそが、その概念のすべてだと述べた。「パースとジェイムズ」の節もあり、パースは1905年ごろから、ジェイムズらのプラグマティズムと区別するため、自分の立場をプラグマティシズムと呼んだ。最後は「プラグマティシズムの意味論」の節である。

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