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ハリー・G・フランクファート·現代

真偽を問わない言説の蔓延を哲学的に解剖した痛快な小論

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哲学倫理

この著作について

プリンストン大学哲学教授ハリー・G・フランクファート(Harry G. Frankfurt)が1986年に発表した小論文を2005年に単行本化した哲学エッセイ(原題『On Bullshit』)。わずか六十七頁の薄い書物だが、哲学書としては異例のベストセラーとなり、世界で数十万部を売り上げた。

【内容】

フランクファートは「bullshit(くそ話)」と「嘘」を哲学的に区別する。嘘つきは真実を知っていてこれを意図的に歪めるが、bullshitter は真偽そのものに関心がない。彼にとって言葉は、自分を印象づけたり会話を埋めたりする道具であって、世界を正確に描くという責任から最初から解放されている。この真偽への無関心こそ、嘘よりも深い意味で真実の敵であるとフランクファートは論じる。現代社会のコミュニケーション過剰は、自分が語る題材について実のある知識も意見も持たないまま「何か言う」ことが求められる状況を増やしており、その結果 bullshit が必然的に膨張する。プラトンパスカルウィトゲンシュタインをさりげなく参照しつつ、真摯さ(sincerity)と誠実さ(authenticity)の区別、自己欺瞞と他者欺瞞の差異などが論じられる。

【影響と意義】

メディア論、修辞学、政治コミュニケーション論、ジャーナリズム教育、さらに生成AIとポスト真実の議論に広く用いられるようになった。後続の『不平等論』『オン・インエクワリティ』とともにフランクファートを大衆的哲学者として知らしめた一冊である。

【なぜ今読むか】

真偽への無関心に支えられた言説が政治とSNSにあふれる時代、本書は「何が問題なのか」を言語化する最短の補助線となる。

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