視
『視覚新論』
しかく しんろん
バークリー·近代
バークリーの知覚論
哲学
この著作について
二十代半ばのジョージ・バークリーが『人知原理論』の準備作として発表した視覚論で、近代知覚論の出発点となった一冊。
【内容】
目は距離や大きさを「見ている」と私たちは思いがちだが、本書はこの常識を徹底的に疑う。バークリーによれば、私たちが距離と呼んでいるものは本来、手を伸ばし歩いて確かめる触覚的経験にほかならない。視覚にはそれ自体として奥行きがなく、距離・大きさ・位置の知覚は視覚情報が触覚や運動経験と繰り返し連合することで事後的に構成される記号関係である。本書の後半では、生まれつき盲人だった人が開眼手術を受けた場合にどう世界が見えるかという思考実験「モリヌー問題」にも踏み込み、視覚と触覚の独立性が議論される。
【影響と意義】
心理学が独立の学問となる以前に、知覚を「構成された体験」として分析した先駆的著作である。十九世紀以降のヘルムホルツの無意識的推論、ゲシュタルト心理学、二十世紀のギブソンの生態学的知覚論、そして現代の認知科学・ロボット視覚に至るまで、視覚と他の感覚の関係を問う議論は本書を一つの源に持つ。
【なぜ今読むか】
VR・ARや画像生成AIによって、私たちは「見ること」が単なる光の受容ではないことを日々実感している。日常の見るという体験がどのように組み立てられているかを、三百年前の鋭い論じ方で点検できる書物である。
著者
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