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『ニーズ中心の福祉社会へ』
にーずちゅうしんのふくしゃかいへ
上野千鶴子《うえのちづこ》・中西正司·現代
当事者のニーズを中心に福祉社会を再設計しようとする日本語の重要文献
哲学
この著作について
社会学者・上野千鶴子《うえのちづこ》と障害者自立生活運動のリーダー・中西正司《なかにししょうじ》が、当事者主権の思想からケアと福祉を再構築することを提言した共著。
【内容】
本書はまず、従来の福祉がサービス提供者の側からニーズを定義し、ケアの受け手を受動的な位置に置いてきたことを批判する。そのうえで、障害者自立生活運動で培われた「当事者主権」の理念を軸に、自らのニーズは自らが最もよく知るという原則を徹底する福祉モデルを提案する。障害者介助の現場、介護保険制度の設計、医療・教育・高齢者ケアにおける当事者の声、ピアサポート、当事者団体によるサービス供給、制度内の自己決定の場の確保など、具体的な論点が順に取り上げられる。ケアの倫理と、権利の政治とが接続される試みとして読める。
【影響と意義】
日本のケア論と障害学を理論的に架橋した著作として、介護保険制度論、障害者運動、当事者研究などの領域に広く影響を与えた。『当事者主権』『ケアの社会学』などと合わせて、ケアをめぐる日本語思想の骨格を形づくっている。
【なぜ今読むか】
自分や家族がケアを受ける側に回る可能性は誰にでもある。その際に「どのような支援を、誰が決めるのか」という問いは、制度と自由の関係を揺さぶる問題として立ち現れる。当事者の視点から福祉を考え直す起点となる書物である。