民
『民族とナショナリズム』
みんぞくとなしょなりずむ
アーネスト・ゲルナー·現代
「ネーションはナショナリズムが作り出す」という逆説的テーゼを論じた社会学的名著
政治
この著作について
プラハ生まれの社会人類学者アーネスト・ゲルナーが、ケンブリッジでの長年の研究をもとに、ナショナリズムの近代的性格を鋭く理論化した古典。
【内容】
ゲルナーは、ナショナリズムを「政治的単位と民族文化的単位が一致しなければならないという原理」として定義する。そのうえで、農耕社会では分業と階層が固定されておりネーションのような均質性は求められなかったが、産業化した社会では高度な分業と流動的な労働力が必要とされ、共通言語・識字能力・学校教育を通じた文化的均質化が経済的必要となると論じる。こうして、ネーションは自然の単位ではなく、「産業化が要求する均質な大衆文化」を政治的単位と一致させようとする動きの産物として位置づけられる。後半では、「時間・イスラム・言語」を軸にした類型論が展開される。
【影響と意義】
アンダーソンの『想像の共同体』、ホブズボームの『創られた伝統』と並び、近代主義的ナショナリズム研究の三大古典とされる。ポスト冷戦のナショナリズム再燃、旧ユーゴ紛争、移民受け入れ論などに理論的な補助線を提供し続けてきた。
【なぜ今読むか】
国民国家が自明ではなくなりつつある時代に、ナショナリズムを「永遠の本性」ではなく「産業社会の設計」の産物として冷静に見直すことは、議論を感情論に回収させないための大切な一歩である。