龍
『龍樹《りゅうじゅ》(中村元《なかむらはじめ》)』
りゅうじゅ(なかむらはじめ)
中村元《なかむらはじめ》·現代
縁起《えんぎ》と空の思想を平易に解説した入門書
哲学入門
この著作について
日本を代表する仏教学者・中村元《なかむらはじめ》が、大乗仏教の論理的基礎を築いた龍樹の生涯と思想を、一般読者向けに丁寧に解説した講談社学術文庫の入門書。
【内容】
本書はまず、紀元二〜三世紀の南インドに生きた伝説の学僧ナーガールジュナの生涯、『中論』『廻諍論《えじょうろん》』『六十頌如理論』などの主著を概観する。そのうえで、彼の思想の核心である「縁起=空=中道」の論理が、やさしい例示とともに説かれる。事物には固定的な実体(自性)がなく、すべては関係のなかにしか現れない。この関係性をあらゆる概念に徹底して適用する帰謬論法(プラサンガ)、四句否定、二諦(世俗諦と勝義諦)の教説などが、原典の断片を引用しつつ噛み砕かれる。最後に、龍樹の論理が後世の中観派・唯識《ゆいしき》派・天台宗・華厳宗・禅宗にどう継承されたかが概観される。
【影響と意義】
中村元の仏教哲学研究を代表する一般書として、日本語で龍樹を学ぶ際の最良の入り口の一つとされている。専門研究とは別に、戦後日本における大乗仏教の教養的受容を長く支えてきた。
【なぜ今読むか】
「空」や「縁起」はSNSやビジネス書でも消費される語だが、その内実を原典に近い形で理解する機会は少ない。哲学と実践の両面で効く基礎語彙を、正確な仏教学の観点から学び直せる書物である。