『マルチチュード』
アントニオ・ネグリ、マイケル・ハート·現代
〈帝国〉三部作の第二作・多様な主体の政治的可能性を探る
この著作について
アントニオ・ネグリ(Antonio Negri)とマイケル・ハート(Michael Hardt)が2004年に刊行した政治哲学の共著(原題『Multitude: War and Democracy in the Age of Empire』)。ベストセラーとなった前作『〈帝国〉』(2000)に続く〈帝国〉三部作の第二作として、グローバル資本の時代における新しい政治主体の構想を示した著作である。
【内容】
本書はまず、9.11以後の「対テロ戦争」を通じて浮かび上がる地球規模の恒常的戦争状態を、内戦化する〈帝国〉の暴力として診断する。これに対してネグリとハートは、マルクス的「プロレタリアート」ではなく、多様な差異を保ったまま共通の生政治的労働を通じて連携する「マルチチュード」を対抗主体として提示する。非物質的労働の拡大、情報・感情・コミュニケーションが富の中心となった認知資本主義において、生産そのものが協働的ネットワークとなり、資本が収奪する富と民衆が生産する〈共〉(コモン)の緊張が革命の条件となる。結論部では、所有・代表・戦争を超克《ちょうこく》する新たな民主主義の可能性が素描される。
【影響と意義】
本書はグローバル・ジャスティス運動、オキュパイ運動、スペイン15M、反緊縮運動の理論的背景として繰り返し参照された。認知資本主義論、コモンズ論、プラットフォーム資本主義批判、ベーシックインカム論など、二十一世紀の批判的社会理論の主要な論点の多くが本書を起点としている。
【なぜ今読むか】
プラットフォーム企業が生活そのものを資源化する時代に、階級や国家を超えて連帯する主体を構想するネグリとハートの試みは、理論的体操として依然有効である。