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モーセと一神教

もーせといっしんきょう

ジークムント・フロイト·現代

モーセをエジプト人と仮定し一神教の起源を精神分析したフロイト遺作

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哲学宗教

この著作について

ジークムント・フロイト(Sigmund Freud)がナチスの迫害を逃れロンドンに亡命して1939年に刊行した最晩年の著作(原題『Der Mann Moses und die monotheistische Religion』)。フロイト没年に書かれた遺書的な大胆な歴史的・宗教心理学的試論である。

【内容】

本書は三つの論文からなる。第一論文「エジプト人モーセ」でフロイトは、モーセはヘブライ人ではなく一神教信仰のエジプト貴族であり、アクエンアテンのアテン神信仰の後継者であったという大胆な仮説を提示する。第二論文「もしモーセがエジプト人であったならば」では、モーセがユダヤ民族に一神教を押しつけたのち殺害され、その記憶が抑圧された集合的外傷として民族の無意識に埋め込まれたと推測する。第三論文では、ユダヤ教キリスト教における一神教の発展、父性的神の回帰、贖罪の構造が、民族的規模の「抑圧されたものの回帰」として解釈される。トーテムとタブー(1913)以来のフロイトの宗教論が、ここで民族史・精神分析・宗教哲学の壮大な総合に結晶している。

【影響と意義】

本書はユダヤ教学者からも歴史学者からも激しい批判を浴びたが、ヨーセフ・ハイム・イェルシャルミ『フロイトのモーセ』、ヤン・アスマン『エジプト人モーセ』、エドワード・サイード『フロイトと非ヨーロッパ人』など、二十世紀後半の批判的継承を通じて、集団的記憶研究・トラウマ理論・ユダヤ思想史の重要な参照点であり続けている。

【なぜ今読むか】

民族的記憶・集合的トラウマ・歴史修正主義が政治問題となる時代に、集団の無意識を初めて哲学的主題にした試みとして、論争的に読み返す価値がある。

著者

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