ラ
『ラカンの精神分析』
らかんのせいしんぶんせき
新宮一成《しんぐうかずしげ》·現代
京都大教授による定評ある日本語ラカン入門
哲学心理
この著作について
京都大学教授・新宮一成(しんぐう・かずしげ)が1995年に講談社現代新書から刊行したラカン入門。日本語で書かれたラカン解説として最も広く読まれてきた定番の一冊であり、臨床と理論の両面からジャック・ラカンの思想の全体像を見通す橋頭堡として、大学の哲学・心理学講義でも教科書に採用されてきた。
【内容】
本書は精神分析の基本である無意識の発見から出発し、フロイトの発見をラカンがどう読み替えたかを丁寧に辿る。続いて鏡像段階・想像界・象徴界・現実界のボロメオ的結び目、対象a、欲望のグラフ、父の名、女性的享楽といったラカン理論の中心概念が、臨床症例に即して段階的に導入される。著者自身が精神科医として患者と向かい合ってきた経験に基づき、理論が実際の臨床場面でどう機能するかの具体像が随所に差し挟まれる。難解で知られるラカンのエクリをいきなり読むより、本書を経由することで迷子になりにくい見取り図が得られる、と評者にしばしば推薦されてきた。
【影響と意義】
ラカン派精神分析の日本への定着、文芸批評・映画論・ジェンダー論へのラカン理論の応用、スラヴォイ・ジジェクやジュディス・バトラーの日本語受容の地ならしなど、広い範囲で本書は間接的な基礎文献として機能してきた。著者の『ラカンの精神病理学』『夢分析』と合わせて読めば、著者の精神分析哲学の全体像にもアクセスできる。
【なぜ今読むか】
ケア・トラウマ・自己語りの時代に、精神分析の古典を誰の手引きで読み始めるかは決定的である。平明で誠実な本書はその最良の伴走者となる。