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『伊藤仁斎《いとうじんさい》 人倫的世界の思想』
いとうじんさい じんりんてきせかいのしそう
子安宣邦·現代
仁斎の思考を「人倫的世界」として読み解く研究
哲学倫理学
この著作について
子安宣邦が1982年に東京大学出版会から刊行した伊藤仁斎論である。著者の独自の読みによって、仁斎学を抽象的な形而上学ではなく、日常生活の中から立ち上がる人倫の思想として再構成した研究書である。
【内容】
子安は仁斎を、朱子学の理気論を否定し、人と人との具体的な関係から道徳を組み立て直そうとした思想家として捉える。本書のキーワードは題名にもある「人倫的世界」であり、家族、共同体、君臣関係といった具体的な場で生きられる徳の在り方が、仁斎の語彙に即して丁寧に追跡される。テクストの精読を基礎に、近世日本の思想空間を浮かび上がらせる。
【影響と意義】
戦後の仁斎研究は丸山眞男《まるやままさお》以来の解釈枠組みに大きく依存してきたが、本書はそれを継承しつつも、テクスト読解の独自性によって新しい仁斎像を提示した。以後の日本近世思想史研究に対し、子安は本書を含む一連の仕事で大きな影響を残し、思想史の方法論そのものを問い直す契機を与えた。
【なぜ今読むか】
抽象的な「正義」や「権利」とは異なる、関係性に根ざした倫理を再評価する現代の議論にとって、本書の仁斎像は重要なヒントを与える。古典研究と現代思想を架橋する一冊として、いまもなお新鮮である。
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