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『イスラームから見た「世界史」』
いすらーむからみた せかいし
タミム・アンサーリー·現代
内藤正典によるイスラム文明の視点からの世界史概説書
哲学
この著作について
中東地域研究者・内藤正典《ないとうまさのり》が、西洋中心の世界史観を相対化し、イスラーム文明の視点から世界の歩みを読み直した一般向け概説書。
【内容】
本書は七世紀、ムハンマドが出現したアラビア半島から話を起こす。続いてウマイヤ朝、アッバース朝、イベリア半島のアンダルス、オスマン帝国、サファヴィー朝、ムガル帝国、そして近現代の中東・中央アジア・東南アジアに至るまでを、政治・経済・学問・科学・法・文化の諸側面から辿る。ヨーロッパがルネサンスと近代を迎えるはるか前から、バグダードは翻訳と天文学の中心であり、アンダルスは医学と哲学の交流の場であった、という事実が具体的な固有名とともに描かれる。最終章では、植民地支配、冷戦、パレスチナ、アラブの春、中東内戦、ヨーロッパのムスリム移民問題といった現代的課題が、歴史的脈絡のなかに位置づけ直される。
【影響と意義】
テロや原理主義の言葉だけで「イスラーム」を語る風潮に対し、より厚みのある歴史的視点を日本社会に提供した点で評価が高い。著者自身のトルコ・中東での長い研究経験が、文章の説得力を支えている。
【なぜ今読むか】
国際ニュースでイスラームが話題になるたび、背景に巨大な歴史が横たわっていることを忘れずにいるのは難しい。世界史のもう一つの軸として、イスラーム文明を手短に辿れる実用的な一冊である。