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百学連環

ひゃくがくれんかん

西周《にしあまね》·近代

西洋諸学問を体系化して紹介した明治初期の学問総覧

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哲学日本

この著作について

西周《にしあまね》が1870〜71年ごろに私塾育英舎で行った講義の筆録で、西洋の諸学問(エンサイクロペディア)を日本に初めて体系的に紹介した書。

【内容】

本書は「学」を「普通学」と「殊別学」に分け、数学・論理学・言語学といった普通学と、政治学・経済学・法律学・物理学・化学・博物学などの殊別学を並べて、西洋近代の学問全体の見取り図を描き出す。西周はここで「哲学」「理学」「心理学」倫理学「芸術」「主観・客観」「先天・後天」といった多くの学術語を造り出し、同時代の百一新論とあわせて日本語の学術語彙の骨格を築いた。

【影響と意義】

本書で生まれた訳語の多くが今日の日本語にそのまま残っており、近代日本のあらゆる学問分野の基礎語彙を提供した。西洋学問を単に輸入するのではなく、翻訳を通じて体系化しようとする明治知識人の営みを象徴する作品である。

【なぜ今読むか】

現代の「教養」「リベラルアーツ」論の原型がここにある。学問の地図を俯瞰して自分の関心を位置づけ直したいとき、日本語で書かれた最古の総覧として参照する価値がある。

さらに深く

【内容のあらまし】

本書は西周が私塾育英舎で行った講義を弟子永見裕が筆録したもので、講義録の形式をとる。西周はオランダ留学中にライデン大学のフィッセリングのもとで近代諸学を学び、帰国後にその知見をどう日本人に伝えるかを工夫していた。冒頭で彼はまず「学」とは何かを論じる。学とは事物の体系的な知識であり、断片的な経験ではない。彼はこれをオランダ語の wetenschap、英語の science、フランス語の science の翻訳語として位置づける。

続いて学問全体の見取り図が描かれる。西周は学を二つに大別する。「普通学(コモン・サイエンス)」は、あらゆる学問の基礎となる方法と道具に関わる学であり、「殊別学(パーティキュラー・サイエンス)」は個別の対象を持つ学である。普通学には、思考の形式を扱う論理学、量と空間を扱う数学、言葉を扱う言語学などが含まれる。彼はここで「論理学」「心理学」「倫理学」といった訳語を一つひとつ提案していく。

殊別学の章では、自然界を扱う学と人間社会を扱う学が並列される。自然界の側には、天文学・物理学・化学・博物学(植物・動物・鉱物)・地理学が並ぶ。人間社会の側には、政治学・経済学・法律学・歴史学・教育学・統計学が並ぶ。それぞれについて、対象と方法、欧米での発達史、日本における必要性が短く解説される。西周は単に分類を示すだけでなく、「先天と後天」「主観と客観」「現象と本質」といった抽象概念を、ヨーロッパ語と漢学の語彙を融合させて造語していく。

講義の終盤に置かれるのが「哲学」をめぐる議論である。西周は philosophy をいったん「希哲学」と訳し、最終的に「哲学」という熟語に落ち着く。彼にとって哲学は、諸学の体系の頂点に立ち、各分野の根本前提を吟味し直す学である。本書で生まれた「哲学」「理学」「主観・客観」「演繹・帰納」「概念」「観念」などの語は、その後の日本語の学術語彙の骨格を形づくった。明治三年から四年にかけての講義であり、当時としては西洋の学問世界を日本語で俯瞰する最初の本格的な試みである。

著者

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