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ファウスト

ゲーテ·近代

知と人生の究極を求める壮大な劇詩

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文学

この著作について

ゲーテが生涯の60年以上をかけて完成させた、ドイツ文学の最高傑作にして人類の精神的遺産。

【内容】

2部構成の劇詩。学問の限界に絶望した老学者ファウストが、悪魔メフィストフェレスと契約を結び、「瞬間よ、とどまれ、おまえは美しい」と口にしたら魂を差し出すという賭けに出る。純朴な少女グレートヒェンとの悲恋(第1部)を経て、第2部では皇帝の宮廷、古代ギリシアの美神ヘレナとの結合、そして海を干拓する大事業へと、あらゆる人間的経験を遍歴していく。恋愛・政治・芸術・労働と、近代人が欲望しうるものを順に試し尽くすファウストの姿は、近代そのものの象徴である。

【影響と意義】

中世の伝説を素材にしつつ、近代人の尽きない探究心とその代償を描き切った。ニーチェ、シュペングラー、トーマス・マンらドイツ思想に多大な影響を与え、「ファウスト的」という形容詞は、限界なき欲望と探究を表す言葉として今も使われている。音楽ではグノー、シューマン、マーラーらが題材として取り上げた。

【なぜ今読むか】

メフィストフェレスの皮肉な知恵、グレートヒェンの悲劇、第二部の壮大な象徴世界など、読む者を引き込む力は尽きない。「人間は努力する限り迷うものだ」という一節は、立ち止まって振り返りたい時にこそ響く。

さらに深く

【内容のあらまし】

劇は「天上の序曲」で幕を開ける。神とメフィストフェレスがファウストをめぐって賭けをする。ファウストは書斎で「哲学も法学も医学も神学も学び尽くしたが、何もわかった気がしない」と嘆き、自死を考える。鐘の音と復活祭の合唱に救われた彼の前にプードルとなって現れたメフィストフェレスは、地上のあらゆる経験を見せると申し出る。「瞬間よ、とどまれ、おまえは美しい」と一度でも口にしたら魂は悪魔のものになる、というのが契約の条件だ。

第1部は若返ったファウストと町娘グレートヒェンの悲恋にあてられる。出会い、宝石、母を眠らせる薬、兄ヴァレンティンの死、嬰児殺しと牢獄。純朴な少女が聖母像の前で涙する場面と、地下牢で正気を失いつつ祈る場面の対照は文学史に残る。最後にグレートヒェンを天が救う声とともに第1部は閉じる。

第2部は一転して壮麗で象徴的な大絵巻となる。皇帝の宮廷で紙幣の発明に手を貸し、古代ギリシアに降りて美神ヘレナと結ばれ、二人のあいだに生まれた子オイフォリオンは大空に憧れて墜死する。古典と近代の結合が芸術として現れ、すぐ手放されていく。後半でファウストは海を干拓して大事業を起こし、新しい土地で人びとが自由に働く未来を思い描く。盲目になった老ファウストは、亡霊の鋤の音を干拓の槌音と取り違え、「自由な土地で自由な民とともに立つ」その光景に向かって、ついに「瞬間よ、とどまれ」と口にする。

契約は果たされたかに見えるが、彼の魂を奪いに来た悪魔の手から、薔薇を撒く天使たちが魂を救い上げる。最後に「永遠に女性的なるもの、われらを引きて昇らしむ」という神秘の合唱で全編が閉じられる。

著者

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