人
『人間についての試論』
にんげんについての しろん
エルンスト・カッシーラー·近代
人間を「シンボルを操る動物」として捉え直したカッシーラーの名著
哲学
この著作について
亡命先のアメリカで英語により執筆された、エルンスト・カッシーラー晩年の総括的な著作で、彼の『シンボル形式の哲学』全三巻のエッセンスを一般読者に開いた名著。
【内容】
前半ではギリシア哲学以来の『人間とは何か』をめぐる諸定義(理性的動物、社会的動物、労働する動物など)が点検される。カッシーラーはそれらを批判的に継承しつつ、人間を「シンボルを操る動物(アニマル・シンボリクム)」として再定義する。後半では、神話、宗教、言語、芸術、歴史、科学の各領域が順に取り上げられ、どれもが外界をそのまま写すのではなく、特有のシンボル形式を通して世界を構成していることが示される。諸文化は単に事実の集合ではなく、人間が自分を形づくるための多彩な象徴体系として理解される。
【影響と意義】
文化哲学、記号論、文化人類学、言語哲学、心の哲学の分野に広く取り入れられ、スーザン・ランガー、ネルソン・グッドマン、クリフォード・ギアツらに直接的な影響を与えた。ナチスを逃れたユダヤ系ドイツ哲学者が、英語圏の読者に向けて書いた人文知のマニフェストという歴史的意義も大きい。
【なぜ今読むか】
画像、動画、絵文字、AI生成表現など、人間は日々、記号を作り出し続けている。数ある入門書のなかでも、人間活動の全体像を「シンボル」というキーで見渡せる本書は、現代のメディア社会を哲学的に捉え直す視座を提供してくれる。