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『21世紀の啓蒙』
にじゅういっせいきの けいもう
スティーブン・ピンカー·現代
理性・科学・ヒューマニズム・進歩という啓蒙の価値観が人類に何をもたらしてきたかを豊富なデータで論証した大著
哲学
この著作について
認知科学者にしてハーバード大学教授スティーブン・ピンカーが、啓蒙主義の遺産としての「進歩」を膨大なデータで擁護した現代思想の話題作。
【内容】
本書はまず、啓蒙思想の中核をなす四つの理念、理性・科学・ヒューマニズム・進歩を出発点に据える。続いて、寿命、乳児死亡率、健康、栄養、貧困、不平等、安全、殺人、戦争、民主主義、権利、知識、生活の質、幸福度、環境といった分野ごとに、七十以上の長期時系列グラフが示される。人類は、短期的な揺らぎを含みながらも、歴史的長期スパンでは暴力が減り、知識が増し、生活の質が上がってきたと論じられる。最後に、ポピュリズム、権威主義、反科学、気候変動への対応の遅れといった現代の脅威を前に、啓蒙の価値をどう守るかが論じられる。
【影響と意義】
前著『暴力の人類史』と並び、「世界は悪くなっている」という通念をデータで反駁する代表的な書として世界的に読まれた。ビル・ゲイツが愛読書と公言したことでも知られる一方、測定指標の選び方や因果解釈をめぐり左右双方の論者から活発な批判を受け、現代の論壇の中心的な議題を作り出している。
【なぜ今読むか】
ニュースのほとんどが「悪化」のフレームで語られる時代、長期データで世界を眺め直すことは、冷静な判断の土台を立て直すための有効な運動となる。楽観論の正当性とその限界を自分で吟味する格好の材料である。