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『エンキリディオン キリスト教戦士必携』
えんきりでぃおんきりすときょうせんしひっけい
デジデリウス・エラスムス·近代
内面の信仰を説くエラスムスの霊性入門
哲学宗教
この著作について
原著 Enchiridion militis Christiani(1503年刊)。エラスムスが世俗の友人の妻からの依頼を受けて執筆した、キリスト教徒の生き方を導く手引書である。書名はギリシア語の手引書を意味し、同時に小剣をも意味する語で、霊的戦いを生きる者の必携書として位置づけられる。
【内容】
エラスムスは外形的儀式や巡礼や聖遺物崇拝といった当時のカトリック信仰の表層を厳しく批判し、内面における愛と模倣こそが真のキリスト教だと説く。聖書を日々読み、キリストの生涯を内的に模倣することで、誰もが司祭や修道士に劣らない霊的生活を送れると主張する。プラトン的な内外二元論に裏打ちされた魂の鍛錬論であり、後のキリストの哲学と呼ばれる思想の核を成す。在家信徒の信仰生活を肯定する論理は、宗教改革を準備する役割をも果たした。
【影響と意義】
本書は16世紀ヨーロッパのベストセラーとなり、各国語訳を通じて広く読まれた。ルターやツヴィングリも初期にはエラスムスの霊性論に共鳴し、本書の影響下で改革思想を形成した。日本語訳は金子晴勇・木ノ脇悦郎・片山英男訳『宗教改革著作集2 エラスムス』教文館1989所収、および『エラスムス神学著作集』教文館2016に収録されている。
【なぜ今読むか】
形式と内面の関係を問う本書の主題は、宗教を超えて現代の倫理生活にも通じる。儀礼や所属に頼らず、いかにして善く生きるかという問いを古典の高みから考えさせる。
著者
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