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天文対話

てんもん たいわ

ガリレオ·近代

ガリレオの天文学書

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哲学

この著作について

ガリレオ・ガリレイが教皇ウルバヌス八世の許可を得たうえでプトレマイオスとコペルニクスの二つの世界観を比較検討した対話篇で、彼を宗教裁判に導いた運命の書。

【内容】

聡明なサルヴィアティ、好奇心旺盛な紳士サグレド、旧派アリストテレス主義の代弁者シムプリチオが四日間語り合うという設定が取られる。第一日は天と地の区別を否定する議論、第二日は地球の自転、第三日は地球の公転、第四日はガリレオ自身の潮汐理論によって地動説の根拠が示される。終始、旧来の宇宙論の論拠が実験事実と観測に照らして打ち崩されていく。対話の終盤でシムプリチオが教皇の好んだ論を述べる場面が、教皇の不興を買う原因となったとされる。

【影響と意義】

刊行翌年の一六三三年、ガリレオは宗教裁判で有罪とされ、本書は長く禁書目録に載せられた。にもかかわらずヨーロッパ中に読み継がれ、地動説を学界の常識へと押し上げる決定的な一冊となった。科学と教会の関係、表現の自由、権威と真理の緊張という普遍的主題を象徴する歴史的テキストである。

【なぜ今読むか】

科学的発見が既存の世界観・信念と衝突するとき、社会はどう反応するのか。四百年前の論争を追うことは、ワクチン、気候、AIをめぐる現代の科学と権威の関係を考える手がかりとなる。

さらに深く

【内容のあらまし】

物語は架空のヴェネツィアの邸宅で四日間にわたって展開される。三人の対話者は、コペルニクス説を熟知した洗練された科学者サルヴィアティ、好奇心旺盛で公平を心がけるヴェネツィア紳士サグレド、伝統的なアリストテレス=プトレマイオス派の代弁者シムプリチオである。シムプリチオの名は哲学史上の人物アフロディシアスのシンプリキオスにかけているが、同時にイタリア語で「単純な者」をも意味し、ガリレオの皮肉が滲んでいる。

第一日のテーマは、天と地の根本的な区別を否定することである。アリストテレス物理学では、月より上の天界は不変の完璧な物質から成り、月の下の地上界は変化と腐敗の世界とされていた。サルヴィアティはガリレオ自身の望遠鏡観察を引き合いに、月にも山と谷があり、太陽にも黒点があり、木星には衛星があると示し、天と地は同じ自然法則の下にあると論じる。第二日は地球の自転をめぐる議論である。塔のてっぺんから落とす石はなぜ真下に落ちるのか、という古典的な反論に対し、サルヴィアティは慣性の概念を持ち出し、船のマストから落とした石が同じ動きで甲板に落ちる事例を緻密に説明する。

第三日は地球の公転である。金星の満ち欠け、火星の見かけの大きさの変化、惑星の逆行運動が、地球も太陽の周りを巡っていると考えると遥かに自然に説明できることが、図解と数値で示される。ティコ・ブラーエの折衷的な体系も検討されるが、観測との整合性ではコペルニクスのほうが優れていると結論される。第四日は潮汐論で、地球の自転と公転の合成運動が大洋を揺らしているという、ガリレオ自身の独創的な仮説が披露される。後にこの説は誤りだと判明するが、議論の運びそのものは見事である。

物語の終わり近く、シムプリチオは口頭で、神は無限の知恵を持つのだから人間が思いつかない仕方で世界を動かしているのかもしれない、と教皇ウルバヌス八世がしばしば口にしていた論を述べる。教皇はこの場面を侮辱と受け取ったとされ、本書は刊行翌年に異端審問にかけられる引き金となった。それでも本書は欧州中で読まれ、地動説を学界の常識へと押し上げ、科学と権威の関係を象徴する書物としていまも読み継がれている。

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